社会システム研究

新「協調分散型ものづくり」立国

はじめに

本ページ「社会システム研究」は、私の電器業界・太陽光発電業界での経験から記した拙著「キーストーン戦略構築手法に関する研究」を基点にしています。本論文では、競争戦略至上主義から脱却し、利他主義を念頭にエコシステムを構築することで関係企業・団体の繁栄を支え、社会貢献と顧客価値の継続性を増進する、その手法について考察してきました。

表題の「協調分散型」について説明します。

「協調」とか「分散」という概念で社会を考えること自体は新しいものではありません。しかしながら、競争戦略を第1に考えてきた時代のこれらの概念は、言うまでもなく競争のためでした。競争のためなら、品質にも苦心しながらですがコスト重視で海外進出を考えてきています。もちろん、当地の経済発展というモチベーションもありました。競争戦略至上主義から脱し利他主義に基づくエコシステム戦略を考えた場合、協調や分散の方法を再考察し進化させていく必要があると思います。

また、逆説的ですが、競争力を軽視するわけではありません。望ましくないエコシステムに容易に吸収されてしまうようなエコシステム戦略であってはいけないのです。自分が強くなければ周りを幸せにはできない。利他と競争の融合を再定義していくことが、新「協調分散型ものづくり」立国、です。

また「立国」とすることも意味があります。日本だけよければいいという意味ではありません。たとえば、企業戦略が優先され海外展開、国内はものづくりが空洞化し金融やITなどのみとなってしまった場合、これでは国造りはかなわない、という意味での立国です。ものづくりを支配することに目を奪われ、ものづくり現場の愚直な「カイゼン」で収益を上げていくことから逃げてはいけないのです。

協調:モノづくり企業/現場間の協調のみならず、企業と行政との協調、とりわけそこで働く人々の生活基盤と子供たちの成長戦略まで見据えた協調です。たとえば、自治体が企業誘致に熱心であっても、教育含む生活インフラ整備が不十分であると人を呼び込めません。教育に関しても、特徴ある人材づくりにつながる教育の街があればなお魅力が増します。この生活インフラ整備に関しては、地域おこしと同じ視線で、地域住民との連携も不可欠です。ここまでは当たり前の話ですが、自治体や企業の努力によるインフラ作りの努力に加え、国民の行動変容をストレスなく実現していくための研究がまだまだ不足していると思います。

また、モノづくりを海外へ丸投げするのではなく、中長期的な視点にたって、日本にマザー工場を置き、海外に展開するなど、ケーススタディを通じて、多くのモノづくり企業が情報共有することを意味します。

分散:企業の地方への拠点分散に加え、リモートワーク、教育現場でのリモート授業、 (遠足や修学旅行兼ねて)学校間交換授業なども組みあわせた生活インフラの分散化とセットで考えることを意味します。この目的のために、地方へバランスよく分散させるための企業立地の考察が必要で、従来にも増した住民視線での分散検討が必要と考えています。(現在はコロナ禍で議論が活発化しています)

私は、1979年から36年間電器業界、その後4年は太陽光発電事業とIoT(Internet of Things)技術の中で仕事をしてきましたが、電器業界の大凋落に遭遇し、スキルを向上すべく太陽光発電業界に転身しました。この小史を振り返ると、収益を得る方法論の進化とエコシステム構築手法の進化、が不十分であったことを考えさせられます。

企業の利益は「社会への貢献の対価」(松下幸之助)に関して、まさに、方法論が進化できなかったがために、社会に貢献できず利益も得ることができなくなった、決して、バブル崩壊など経済環境の変化のみが原因ではないと考えるべきです。

モノづくりの時代は終わった、コトづくりの時代だ、観光などサービスやITで稼ぐ時代だ、とよく言われます。本当にそうでしょうか・・・?もちろん、サービスやITで事業を伸ばすことに否定はありません。AIが今後モノづくりの仕事を奪っていくとも言われています。

しかしながら、サービス事業にしろ、ITにしろ、モノの上に成り立っていることを考えると、モノづくりによる普遍的な付加価値創出を根幹に据えるべきと思います。また、景気を支える消費は、人々が納得できる仕事に就いていることが前提です。モノづくり事業が衰退すると、雇用環境のインバランスを生み出してしまいます。

私の主張は、従来の競争至上主義から脱却したモノづくり戦略を構築し、ライバルを蹴落とすがごとくの発想ではなく、商品などの付加価値化の知恵は競争しても同業者の繁栄も考慮していこう、というものです。これを私は、冒頭の協調分散型の意味も踏まえて「協調分散型モノづくり」と名付けました。

もちろん、VTRの規格でVHS vs ベータの時代にみられた顧客価値優先のための仲間づくり、規格標準化の歴史も過去にはありました。協調の思想がなかったわけではありません。しかしながら、これからの時代は産業界の協調だけではなく、人々の生活基盤と含めた協調が必要と考えています。

過去40年から今の時代をみた、私のモチベーション

1980年代は、高度経済成長は終焉するもGDP成長率は5%前後で推移する堅実な時代でした。新たなイノベーションが希求され、企業間競争も激化していきますが、1993年ごろのバブルの崩壊、2000年以降の低GDP成長率、2008年のリーマンショック、を経て我々は今、長期デフレ傾向の真っただ中にいます。

デフレ経済を打破するためには、「消費」が重要と言われていますが、消費を支える若年層は減少傾向にあります。地方活性化は、大都市一極集中を軽減し、少子高齢化の対策になると思われるますが、政府・自治体の努力もみられるも、まだまだ大都市一極集中は継続しています。様々な要因が論じられていますが、私は、地方で若い人にも魅力のある仕事の場づくりが急務と思っています。

魅力ある仕事の場があれば、自動的に、子育て環境含め魅力的な生活の場ができていくと思います。この「魅力ある仕事の場」は、私の視点のみならず、多様な視点で議論されるべきと思っています。

経済成長のカンフル剤として観光立国も掲げられています。しかしながら、観光業の発展は大賛成ですが、人の往来と訪れる人々の経済力が、この観光業の基盤であることを忘れてはいけないと思います。また、インバウンド期待は、コロナ危機で直面しているように人の往来に関するリスクがあります。国内外を問わず、訪れる人の経済背景を、事業の連鎖、雇用構造のバランスを考えながら、観光立国の妥当性検証の一環として検討すべきと思います。もちろん、観光業での各所での工夫、努力を否定したいわけではありません。

モノづくり関係産業は、海外シフトが続いてきた歴史があります。中国などは「世界の工場」と呼ばれ、国同士の互恵関係や企業の収益構造の改善を目指して加速してきました。しかしながら、日本は、安易にモノづくりを空洞化させてきたと私は考えています。もちろん、モノづくりによって互恵関係にある国々への発展にも寄与してきましたし、企業には、現地化戦略や様々な論理が働いていて、深い考察なき批判は避けるべきとは思っています。

しかしながら、それでも今の日本には、モノづくり回顧が最重要課題と考えます。なぜならば、農業含めたモノづくりの減少傾向が、「雇用場所の都会化」(部品などサプライチェーン脆弱化も招き)「雇用の多様化の阻害」などを招いていると考えるからです。

モノづくりにおける大競争時代を回顧することが目的ではなく、「協調分散型モノづくり」の適用性をできるだけ多くの産業分野で考察し、その意義と重要性を論じていきたいと思っています。そのなかで、技術的な実践分野としては、「農業の近代化」について技術テーマとともに考えた結果を展開していきたいと思います。

たとえば

私の問題意識のひとつに、再生エネルギー固定買取制度と関連産業の構造問題があります。再生エネルギー固定買取制度そのものには、詳細課題はあったとしても基本的に異論はありません。地球温暖化の対策としてCO2削減の機運が高まり、再生エネルギーの普及の後押しとして評価できます。再生エネルギーの一つとして太陽光発電所が急速に普及してきましたが、課題提起は、その部材である太陽電池モジュールや架台は、ほとんどが海外製であることです。中国は太陽電池モジュールの世界シェア70%を占めています。電気代の明細に現れる再エネ賦課金は、海外のモノづくり活性化には寄与し、国内モノづくりへの恩恵は少ないことが現実です。

CO2減少化のため再エネ賦課金は使われており、意義はありますが、国内の雇用にはなんら寄与していません。ここが、モノづくり回顧のモチベーションのひとつであり、「協調分散型モノづくり」を考える中で、国内雇用と国同士の互恵関係のバランスを面でとらえるべき例と考えています。もちろん海外企業に問題があるのではなく、中国のモノづくりの進化には目を見張るものがあります。

しかしながら、日本のモノづくりが海外へのマネー流出構造にしてしまっているひとつの証左があるということです。

大きな経済問題になっていないとしても、産業構造として中長期的な問題としえ捉えるべきではないかと思います。近隣諸国に対して排他的になれ、という意味ではありません。しかしながら、日本は今少し自国の経済発展なくして近隣諸国への貢献もない、という発想に立つべきと思わっています。太陽電池モジュールも、産総研など国研が国費を投入して開発しても、日本国内企業に寄与するビジネス出口にはつながっていないのです。もちろん、国研の問題というよりは、我々企業人が、産業の空洞化を防ぐために、安易にモノづくりをあきらめない、とう姿勢が重要と思います。

欧州に学ぶ

雇用の多様化と地方への分散化が、私の最大のテーマですが、そのためにたとえば欧州などの参考事例をまとめ、日本へ導入可能な手法に加工提案していきたいと考えています。


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